16mm映画のこと

大学時代私は 宮川一夫主催の『16mmゼミ』に参加していた
宮川一夫というのは 日本を代表する映画カメラマンだった人
羅生門』を始め 黒沢監督の作品を撮り続けて来た名カメラマン
その人が 大学に撮影の講座の客員教授として来ていたのだけど ついでに撮影ゼミも開いていたので そこに私は所属した
ゼミの内容は自分たちで16mmカメラ機材を使って自主製作映画を作る事



16mmカメラというと 日本では報道ドキュメンタリー関係で使うプロのものって感じだけど アメリカでは8mmの上位という感じで 結構アマチュアでも小型の16mmカメラ持ってたりした
アメリカでは 8mmはホームムービー アマチュアでも自主製作は16mmって棲み分けてたみたい

 
で よく思い起こされる16mmカメラっていうと 
リフレックス

こういうの
いかにもって感じのカメラ


ゼミで使ってたのはこいつ
エクレール

ゼミ撮影の合間に待機中のカメラを撮って 年賀状にした写真
場所は写真学科の建物の中の空き部屋 たぶん商品スタジオかなにかにするつもりで作られた部屋なんだろうけど 使われてなくガランとしたコンクリート壁むきだしの無機質な空き部屋 そこを借りてセット組んで撮影してた


屋外シーン撮影風景


私はこの時音声担当だったので
自前のデンスケもって塩ビパイプの先にマイクつけて
撮影中の役者の音声ひろってました


小物入れとしてまだ持ってた 当時の16mmフィルムの缶ケース


当時私は 某TV局報道部でバイトしてまして
ニュースフィルム編集の手伝いもしてました
当時はプロ用携帯ビデオカメラが出始めたばかりのころで
まだ現場の素材はほとんど16mmフィルム
現場で取材撮影されたフィルムは そのままカメラマンの手から同行したプレスライダーに手渡され バイクぶっ飛ばして局に先に戻ってくる 即局内4階にある現像室へ放りこまれ現像 締め切りが近い急ぎの場合は高速現像処理して30分弱で現像があがる 現像完了すると 2階の編集室に内線が入る そして待機してた私が階段を駆け上がり(エレベーター待ってる暇もないので)現像室へフィルム取りに行き また階段走り下りて編集室へ持ち帰る 編集は局の人と私らバイトの2人一組の作業 机に向かい合わせで座り 局の人がフィルム内容をザッとエディタで確認してから 必要な部分をピックアップしてはさみでカットして 私に渡す 渡されたフィルムをスプライサーで次々と繋いで カウンターにかけて表示される秒数を報告する ニュースによりあらかじめ 何秒枠で放送するか決まっているので その秒数にピッタリあうように フィルムを切ったり繋げたりの作業を繰り返す これとは平行してデスクの方では取材に行ったディレクターが文字原稿を書いている 双方完成したら今度はアナウンサーやディレクターが編集室に集まり試写する 編集室の片隅に設置された16mm映写機に 私がサッとフィルムを掛けてディレクターのカウント指示で映写機を操作する 映像に合わせてディレクターが書いたニュース原稿をアナウンサーが読んで 映像とズレがないか等をチェックする それが終わると フィルムを映写機から外して 今度は1Fのサブ調整室へ納品して完了
ニュース編集の現場は新鮮な情報が命だから 分秒を争って作業する場合が多かった
本番直前に入ってきたフィルムを急いで編集して放送ギリギリにサブへ渡すなんてことも日常だった
その関係で映写機にフィルム掛けたり外したりするのは早かったです
フィルム編集での繋ぐ作業も ゼミではニュース現場と違い なんて映画関係ではのんびりゆっくり作業するんだろって戸惑うくらい
でも16mm取材は 現像しなくていい ビデオテープによるENG(エレクトリック・ニュース・ギャザリング)取材へ比重をどんどん移していきました




あと ドキュメンタリー映像の音入れスタジオでバイトしたこともあって
そこではドキュメンタリーの効果音やアフレコの手伝い
素材は当然16mmフィルム 映写機へのフィルム掛け替えとかは報道でやってたことと同じ
特殊なのは録音機材 録音テープは16mmフィルムとまったく同じサイズで フィルムと同じパーテーションの穴もあいてる フィルムと形状もまったく同じ 違いは全面磁性体の茶色いテープという部分だけ フィルムとこの録音テープはサイズが全く同じなので モーターの回転速度が完全にシンクロしてれば 映像と音はまったくずれなくピッタリ一致して上映できる というか映写機とデッキは通信で速度が常にシンクロするようになってる (このテープかける機械の名前思い出せないんだよね) 機械は大型のオープンリールデッキみたいな形状してる通常のオーディオデッキと違うのはテープ幅以外に テープを送るローラーがゴムじゃなくて 金属の突起がついたギアみたいなローラー(映写機と同じような送り出しローラー)  テープが普通のオーディオ用みたいな柔軟性のあるテープじゃなくて 映像フィルムと同じような素材の結構硬いやつで 機械にテープを掛けるとき うまくテンションを調整してやらないと テープをスタートさせた瞬間にブチッってテープが切れちゃうってやっかいな機材だった
16mmゼミでもアフレコ音入れでは こういう機材を使った


ここで一番驚いたのが効果音素材のレコードの扱い
いろんな効果音が入った素材レコードがあって 場面によってそのレコードから音を取り出して録音していくんだけど このレコードの取り扱いがオーディオマニアが聞いたら発狂しそうなものだった
レコードそのものは保護用袋とかにも入れず 厚紙ケースにそのまま入ってる(たぶんその方が静電気の影響がでにくく カビとかも生え難いからだと思われる)
そしてレコードというのは普通にかけると 埃や静電気や表面の傷で 針がノイズを拾ってしまう(オーディオマニアは静電気防止剤やクリーナーで丁寧に拭き 傷をつけないように扱いも慎重にする)
ノイズが入らないようにレコードを再生するためスタジオでは 軽く埃を払ったらレコード表面にワセリンを塗る! 表面のワセリンを脱脂綿でよく延ばして そのまま表面がワセリンでギラギラしたレコードをプレイヤーに掛ける  これがすごかった 表面傷だらけで普通ならブチブチノイズが入りそうなレコードでもワセリン塗って掛けると まったくノイズのない音素材として録音できた 録音終了したら即今度はレコード板もって洗面所へ行く レコードに水ぶっ掛けて表面のワセリンをジャブジャブ洗い流す ワセリンが落ちたら表面の水分を脱脂綿で拭いて ドライヤーかけて乾かして 厚紙の保管ケースに放りこんで終了
大胆きわまりない扱いだった