8mmフィルムカメラと 自主製作のこと

アニメ『あの夏で待っている』では8mm映画撮影の活動を通してストーリーが進んでいく
主人公が使っているカメラ


これは富士フィルムが発売してた フジカシングルエイトのシリーズのエントリーモデル(当時5万円くらい)のあたりだろう
このあたりのエントリーモデルは 周りに使ってる人がいなかったのでよく判らない


檸檬が使っているのは富士の最高級カメラZC1000

本体価格(レンズ別売り)が16万くらいしたやつ
レンズやオプション込みのセットで買うと20万以上したというカメラ
Cマウントだったと思ったけど レンズ交換可能なマニアモデル
檸檬が持ってるカメラ レンズ バッグ 等 セットでトータル25万オーバーってとこかな
私の周りには 大学が自主製作映画撮ったりする映像計画学科ということもあって 結構このカメラ持ってるやつ多かった
でもトラブル多い欠陥カメラなんだよね
シャッターボタンが電磁レリーズで こいつがしょっちゅう接触不良起す
つまりいざ撮影スタートというときにカメラが回らない・・・
電気系部分が寒さに弱く 寒い日はまったく電磁レリーズが反応しなくなる
撮影直前まで電気毛布にカメラを包んで暖め 撮影準備が整いスタート直前に毛布からカメラを出して撮影
それでもカメラが動かなくなったときのためにZC1000以外に他のカメラを予備で準備しておくのが当然というとんでもないカメラだった(書いたようにZC1000持ってるやつが多かったから メインカメラ以外に 予備としてZC1000を2台用意するなんて贅沢な環境で撮影したこともある でもその時 全部のZC1000が寒さでやられて電気毛布もやくにたたず 結局別の機種で撮影したカットもあったんだよね)


8mmカメラには
富士のシングル8フィルムを使うやつと
コダックのスーパー8フィルムを使うやつがあった
撮影後のフィルムはサイズ同じなので どちらでも関係なく8mmフィルム映写機で映写出来たけど
撮影フィルムカートリッジの規格が違うのでカメラには互換性がなく
それぞれのフィルムを使う専用カメラがあった


シングル8カートリッジは構造のシンプルさから 多重合成などのトリックプレイが出来るカメラだったので自主製作マニアはこちらを選択する場合が多かった


スーパー8は コダックならではの彩度の高い発色のよさが売りだった
昨年公開された『スーパーエイト』という映画があったけど あれは登場人物が8mmカメラで撮影したものがストーリーの要になってたことからついたタイトル


私が持ってたカメラは エルモ製のスーパー8カメラ 買った機種はちょっと特別な機能がついていて
通常は18コマ/分 もしくは24コマ/分で撮影するのだけど 撮影中に専用レバーを押すと その瞬間から54コマ/分の高速撮影するという代物 つまりスローモーション撮影が出来るという特殊機能があったので選択したカメラ カメラ自体が写ってる写真残ってないんだよね
 

私が所有してたのはスーパー8カメラだったけど
日常的にシングル8カメラも使ってた
それがこれ

私の所有カメラじゃないけど 持ち主(写真に写ってる人物)がアニメ専攻してて
普段は絵ばかり描いててカメラ使うのはセルに色塗り完成して撮影するときだけなので 使わないときはずっと借りっぱなしになってた
あの夏の主人公が使ってたカメラの上位機種(8万前後だったかな?)
レンズ口径が大きく グリップ部分もしっかりした作りになってる


8mmフィルムってのは1本で たった3分20秒しか撮影できなかった
いまのビデオ撮影やデジタル撮影から比べると信じられないくらい短い
つまりダラダラ撮影したらあっというまにフィルム1本無駄にしちゃう
だから撮影前のロケハン 絵コンテ カメラは回さないけどフィルムを無駄にしないために本番と同じリハーサルをしっかりしたり とにかく準備に時間をかけて本番に臨んだ
フィルム1本当時800円くらいだったと思う たった3分20秒で 1000円弱のフィルムを使い切るんだからとにかくフィルム予算の無駄を出さない為に本番前にの準備は念入りにやった


お金のかかるのは撮影フィルムだけじゃない
現像も半端なくお金がかかる
3分20秒のフィルムを撮影しおわると現像所に送って 現像してもらう
だいたい現像に3日くらいかかった そして料金が1200円くらいだったと思う
フィルム800円くらい現像1200円くらい トータル3分20秒の為に2000円
ビデオみたいに撮影後すぐ確認できて 消して取り直しできるなんてイージーな時代じゃなかった
3分20秒のフィルム全部失敗なら現像するまでもないけど その中に1カットでもOKシーンが数秒でもあれば1本まるまる現像出さなければならない
数秒の為でも現像料1200円かかる
そして現像後フィルムに映った内容に問題あれば撮影しなおし
また日程のスケジュール組み直してフィルム使って現像して・・・


だからアニメみたいに主人公が無駄にカメラかまえてダラダラ撮影しまくるなんてことはありえないわけで
ああいう場合は普通カメラ構えずに手でフレームだけ作って風景とかを確認するだけ


撮影したフィルムは次に編集する


私のエディタ まだ家にあるので 引っ張り出してみた

映ってるのは当時私が住んでた部屋の様子
エディタ本体の右にオプションのコマ数をカウントするカウンターがある
これでコマ数計算して映像の時間を把握する


全体


エディタで選択したカットを繋ぎ合わせるときは このスプライサーでフィルムをカットしてスプライサー本体に内蔵されているスプライシングテープで繋ぎ合わせる


ところで8mmは基本無声映画
音声同時録音じゃないんだよ

右が通常の8mmフィルム
通常フィルムを編集後 再度現像所に送ってマグネコーティング加工をしてもらう
それが左のフィルム フィルム両端に録音テープの様な茶色の磁性体トラックがある
このフィルムを録音機能付き映写機にかけて アフレコしたりBGM追加したりして映画を完成させる
最初からマグネコーティングされてるフィルムも売ってたけど 通常フィルムより高く NGで捨てる部分が多いと無駄ばかり 
結局普通のフィルムで撮影して編集完了した作品に対して フィルム長cm単位料金のマグネコーティングを依頼したほうが安くついた(料金いくらだったか覚えてないんだよね)



同時録音するときは
カメラとは別に録音機材(生録用 カセットデッキとマイク)を用意して撮影する
映画撮影のシーンでよく見かけるカチンコはこの為のもの
カチンコを鳴らす音と撮影されたカチンコが閉じられるコマが 編集時にシンクロするように音声トラックに音入れするタイミング合わせの為のものだった
いまでは音声同時撮影が当然だから カチンコ本来の必要せいはなくなって
撮影したカットがどのカットなのかを示す シーンNoとカットNoを録画するためのメモとしての機能があるだけ


8mmフィルムでの同時録音できるカメラというのもあるにはあった
しかしそれは すでにビデオテープを利用したビデオカメラが登場した後で
フィルム&カメラメーカーが対抗するために慌てて出したものだったもので
どんなに頑張っても1本のフィルムで3分20秒しか撮影できず フィルム代現像代がかさみ 現像に日数がかかる8mmに勝ち目は最初からなかった



結局8mmフィルム自主製作映画って
30分くらいの大作作ろうと思ったら
フィルム関連だけで5〜10万くらいかかる
NG部分以外でも OKでも必要な部分の前後に冗長な無駄部分があればそれらをカットして破棄するので 単純におおざっぱに計算しても 完成作品の長さの3倍以上の撮影が必要になることが多い 
それ以外にロケの移動交通費 出演者のメシ代(出演料はボランティアってことで・・・)場合によっては衣装代 小道具 大道具にかかる費用 などなどあげはじめたらきりがない
チームメンバーで製作費割り勘にしても1人あたりの費用がずっしりと重くのしかかるんだよ 




おまけ
当時の私の年賀状

私が撮影した8mmフィルムを印画紙に焼いて作った


それで実際撮影はどんな感じだったかというと
昨年の記事
『フランス料理と演劇の日』
http://d.hatena.ne.jp/hidecr/20110604/1307193770
最後の方に少し書いている
それとあとは次回16mm撮影の話の時・・・