小説『象の墓場』


だいぶ前に出てた小説ですが
この作者さんの書いたニュース記事をネットで見かけて 著書に興味もち買ってみました
久しぶりに一気読みしました


内容は 小説となってますが 写真フィルムの世界最大企業コダックがデジタル化への移行に失敗した実録をテーマにしたものです 作者さんは当時コダックの日本法人に在職していて 当時の体験談をまとめた感じです
直接ないように関わる企業の名は変更されてるけど
コダックソアラ
松下電器→トーラス電器
ゲーム機 3DO→5DO
富士フィルム→東京フィルム
ゼロックス→ジロックス 等々
ソニーニンテンドー プリント倶楽部(プリクラ) ソニーが発表したデジカメ マビカ等は実名で登場します


小説は 報道の世界でテスト的にデジカメが使われだした時代 プロデジカメ担当だった主人公が
デジタル化へのアマ市場を開拓することになり 八方塞がりになり会社が衰退していく話です


当時私は大学出て 現像所のプロラボ部門(プロカメラマン相手専門の現像業務)勤務で
ソニーマビカ発表を知って プロは保守的なので10年以上かけて緩やかに変わっていくだろうけど アマは現像の時間もお金も必要なく 撮影してその場ですぐ楽しめるなら ほとんどのアマは画質にこだわりないので(このあたりがコダックを始めこの業界の人たちの認識不足で アマでも画質にこだわりがあると勘違いしてた)雪崩のようにフィルムからデジタルへ切り替わると私は踏んで ラボを退職 その後 ビデオスタジオ(当時はまだカラオケに映像なく音だけで これに映像とテロップつけたらウケるんじゃないかということをやってた会社 だけど営業力と技術不足で頓挫し 会社は崩壊した その後LDカラオケがブームになる)や ぶらぶらしながらTV局のドラマ収録のアシスタントやったりしてた時代 その後画材屋→デザインスタジオ→独立→サインディスプレイ→などその後もいろいろやってきた


とにかく懐かしかった ああ あの頃そんなのあったよね そんな企画動いてたんだとか
まあ全編 アマでも高画質にはお金は払うから衰退しないと言う勘違いを変えなかったコダックと言う企業の衰退記録みたいな感じ
全てにおいて大企業病の小回りの利かなさがある
せっかくの女子高生向け簡易撮影ブースをプリクラ登場以前に企画してたのに こんな低画質のもの出せないとボツになったり 世界的大企業の松下が出す3DOは絶対ヒットするはずと 提携したり
3DOは発売前に街灯デモで見たけど 確かにパンフにコダックのデジタルフォト対応になってたのを記憶してる
でもあれはヒットするかどうか疑わしかった 確かに画面は綺麗だったが 所詮ゲーム機 本体がどれだけ性能よかろうとソフトがなければただの箱 ヒット作ゲームソフトがあるかどうかが問題なんて 当時誰でも思ってた事
それに松下はあくまでも頭の硬い家電屋 音楽業界や映画業界にも手を伸ばしてソフト業務にも理解あるソニーとはわけが違うので失敗するだろうなと思ってた コダックなり松下なり大企業病に陥った頭の硬い内部の視線からは大手が出すんだから市場は後からついてくると言う殿様商売気質で周りが見えなくなってしまうんだろう 


この少し後に同じような感じで消えていった世界的企業があった
レトラセット
カメラ業界からデザイン業界へいった時にお世話になった企業
会社名だけだとピンとこない人も多いかもしれない
でも スクリーントーン インスタントレタリング(インレタ)と言う商品名を聞けばああと言う人も多いだろう
画材屋にいた頃は よく売れたし デザインスタジオに転職してからもここの商品にはよくお世話になった
当時からインレタのデジタル化に取り組んでいて デジタルフォント販売 や Mac向けのデジタル加工支援ソフトなんかも販売してた アドビイラストレータに組み込む ベジュ曲線オブジェの変形アプリなんかはすごく便利で私のお気に入りだった でもコダックのフィルム販売と同じく 絶えず消費するスクリーントーンやインレタで莫大な利益えていた会社にとって 一度買ったらそれっきりのフォントやアプリの販売は旨味がなく 巨大企業として維持していく利益を確保できなくなってしまった 今では米本国でマーカーを細々と販売してるだけのようだ


アナログからデジタルへの変革が怒涛のごとくやってきた時代
その荒波の中で翻弄された企業も多く とても感慨深かった