酒の肴

最近は安い酒ばかり飲んでいて
普段はビールも偽物の発泡酒 日本酒は1.8L/580円合成酒 ワインも1.8L/620円のハウスワイン 4Lパックの格安焼酎ばかりだが 以前は酒や肴にはこだわりを持って飲んでいた


30年以上前のこと 大学生だった私は学生寮にいた
当時の学生寮はどこでも似たようなものだと思うが宴会は日常イベントだった
とくに私のいた寮は毎晩宴会がある酒飲みばかりの寮として有名だったようだ 実際は寮全体イベントとしての宴会はたまにだが 毎晩どこかの部屋で酒盛りをやってたので 部屋をはしごすれば飲み明かすことができた
寮全体イベントのときの肴はカツオのたたきが定番
すごく印象に残っていたのが 北海道出身の先輩の部屋で飲んだとき 電気コンロで干物をあぶって肴にしていた その肴はししゃものオス 先輩が言うには 子持ちじゃないオスのししゃもは商品価値がなくゴミ同然ということで実家から送ってきたというが その量がハンパじゃない かりかりに干したししゃもがビニール袋(今で言えば40Lごみ袋相当)につめこんであった
しかしその商品価値のないというオスのししゃもは ばつぐんにうまかった 私はそれまでししゃもを食べたことがなく そのオスのシシャモが初めてだった その後スーパーでししゃもを買ってみたが メスの子持ちシシャモしか店頭にならんでなく あまりおいしくなかった 卵も身もぼそぼそする こんなものが あのおいしいオスのししゃもより価値があるなんてまちがってると思った
日本人はおうおうにして魚が卵を持っていると ありがたがる傾向がある 魚にしろカニにしろシャコにしろ 周りの人たちは卵があると喜んでおいしいと言い放つが 私はおいしいと感じたことがない どちらかというと卵をもった魚介類の身は 旨味がなくボソボソしたものばかりだった 私は縁起をかつぐ習慣もないので別に卵をありがたがる気はさらさらない 卵に栄養分を吸い取られた抜け殻の身がおいしいはずがない


最近スーパーでたまにシシャモのオスが店頭に並んでいることがある あまりたくさんなく人気がある様子もないが 一部のグルメ向けに普通の子持シシャモよりずいぶん高価な値段がついている
ちょっと前嫁の誕生日に行った居酒屋は函館の材料で料理するのがウリの店で そこのメニューにはオスのシシャモがあった
これらのオスのシシャモは大学時代 寮の先輩が食べさせてくれた カリカリに干されたシシャモの味には比べ物にならないが子持ちシシャモよりはうまいことはたしかである
これだけでなく 世間的にはオイシイと評判のものが実はそれほどではないことはよくある なぜ大勢の人たちは世間の評価につられて 自分の舌で判断しないのかが不思議だ
評判がいいものはオイシイはずだ  それを否定して自分が白い目でみられたくないみたいな 世間の目を気にしていい子ぶるのが根底にあるんだろうか